民泊情報ブログ
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大阪市が国家戦略特別区域法に基づく「特区民泊」の新規申請受け付けを停止する方針を固めたことは、日本の宿泊業界、特にインバウンド対応市場における重要な転換点となっています。全国の特区民泊施設の9割以上が集中し、「民泊の中心地」として機能してきた大阪の流れが変わることで、隣接し強力な観光集客力を持つ古都・京都が、新たな投資の受け皿として注目を集めています。
本記事では、大阪の政策転換が持つ意味を整理し、厳しい規制環境にある京都で民泊投資を成功させるための運営モデルと戦略について詳しく考察します。
目次
大阪市は、特区民泊の新規申請受け付けを2026年5月30日から停止する方針を表明しました[引用1]。この決定の背景には、騒音、ゴミ、マナー違反といった地域住民からの苦情が急増し、行政が対応に追われていたという深刻な事実があります。2024年度に受け付けた認定施設に関する苦情件数は399件に達しており、最も少なかった2021年度と比較すると実に4倍以上という急増ぶりです。
この新規停止措置は、「規模拡大よりも秩序ある運営を優先する」という行政の明確な政策判断を示しています。特区民泊は、住宅宿泊事業法(民泊新法)の年間180日という営業日数制限を受けず、通年営業が可能であるため、参入ハードルが低く収益性が高いとされてきました。しかし、その柔軟性が地域社会との深刻な摩擦を生んだ結果、行政は規制強化の方向へと舵を切った形です。
ただし、重要な点として、新規申請は停止されますが、すでに認可済みの施設については引き続き営業が認められます。既存施設の営業停止や取り締まりは実務上困難であり、施設件数が大きく減少する可能性は低いと見られています。
大阪の特区民泊は、旅館業法と比較して緩やかな条件で宿泊施設を運営できる制度であり、特に海外からの投資家にとって、経営管理ビザ取得の手段として活用されやすい側面もありました。この投資モデルは、日本が法治国家であり安全性が高いという魅力と相まって、中国人オーナーや中国系法人による運営が全体の4割以上を占めるという高い集中度を見せていました。
今回、大阪市に加えて大阪府が管轄する29市町村も新規受け付け停止の方針を固めており、対象には主要エリアのほとんどが含まれています。これにより、大阪地域での民泊施設の極端な増加に明確な「キャップ」がはめられることになります。
一方で、宿泊需要自体は万博後もインバウンドの継続的な流入により高止まりしており、中規模から小規模の地域密着型滞在先が慢性的に不足している現状があります。そのため、大阪で新たな投資機会が制限されることで、資本は必然的に近隣で集客力の強い他府県へと分散することが予想されます。ただし、大阪に極端に施設が増えることにキャップがはめられる一方、既存施設の件数が減る可能性は低いため、市場全体としては緩やかな調整局面を迎えることになるでしょう。
大阪の規制強化は、地理的に近接し、圧倒的な観光集客力を誇る京都にとって「追い風」になると考えられます。大阪での新規参入が困難になるというニュース以降、海外からの京都への投資、特に中国系投資家による物件取得の動きが勢いを増したとする指摘もあります。
京都は年間を通じて国内外から安定した観光客を集める力を持っており、歴史的な寺社仏閣、伝統文化、洗練された食文化など、他の都市にはない独自の魅力を備えています。大阪で投資機会が制限される中、こうした京都の強力な集客力は、投資先としての価値をさらに高める要因となっています。
しかし、京都での民泊経営を検討する上では、大阪と比較してより厳格な規制環境を深く理解しておく必要があります。
京都市は、歴史的な街並みの保護や住民の生活環境維持(騒音、ゴミ問題、マナー違反への懸念)のために、以前から厳しい独自の規制を設けてきました。
まず、特区民泊に関しては、京都市ではかつて一部地域で認められていたものの、現在は特区指定が解除されており、新規の許可申請は受け付けられていません[引用2]。
次に、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく民泊についても、京都市は国の定める年間営業日数180日の上限に加え、独自の厳しい規制を課しています。特に住居専用地域に強い制限を設けており、用途地域が「住居専用地域」である場合、営業日数の上限が60日となります。但し、宿泊客と家主が同居するタイプの施設等では、例外的として180日の営業が認められています。
さらに、京都市のガイドライン[引用3]によると、住宅宿泊事業の届出を行う前に 近隣住民に対して事業の概要を説明し、届出住宅に掲示を行う義務が定められています。この丁寧なコミュニケーションプロセスがトラブル回避に極めて重要な要素となっています。
厳格な規制環境の中で、今後京都で注目される運営形態の一つが、簡易宿所営業です。簡易宿所は旅館業法に規定されており、住宅宿泊事業法と比較して営業日数に制限がなく、年間を通して営業できる大きなメリットがあります。宿泊施設としての信頼性も高く、集客面で有利に働く可能性があります。
ただし、「簡易」という名称ではあるものの、旅館業法の適用を受けるため、以下の基準を満たす必要があります。
簡易宿所の許可取得プロセスは、民泊新法の届出と比較すると複雑で手間がかかりますが、旅館業としての基準を満たすことは、宿泊者と近隣住民の双方にとってより安全で安心な環境を提供することにつながります。

規制が厳格化する時代においては、「軽い運営」ではなく「誠実な運営」が評価され、選ばれる時代となります。京都で民泊経営を成功させるための鍵は、「高稼働率×高単価×効率的運営」のバランスを実現することです。
特に重要となるのは、運営の質を向上させる以下の取り組みです。
法令遵守の徹底:京都市独自の条例や、消防法に基づく消防設備の設置(自動火災報知設備、消火器、誘導灯など)を確実に実施し、安全性を最優先に確保することが必須です。
地域社会との調和:騒音やゴミ問題に関するルールを宿泊者に周知徹底し、近隣住民との定期的なコミュニケーションを図ることが、長期的な運営の基盤となります。近隣住民との良好な関係構築は、トラブル防止だけでなく、地域に根ざした宿泊施設としてのブランド価値向上にもつながります。
効率的な集中管理モデル:戸建てや簡易宿所を点在的に運営する場合でも、清掃スタッフ、備品管理、運営スタッフを共通化し、一括管理するモデルを導入することで、規模の経済を活かしてコストを削減することが求められます。
体験価値の創出:単に宿泊場所を提供するだけでなく、伝統的な構造を生かしたリフォームやインテリア、坪庭の設置など、京都らしさを最大限に活かした独自性のある物件作りを行うことが、競合との差別化と集客力の向上につながります。
大阪の特区民泊停止措置は、民泊ビジネスが「誰でも気軽に始められるビジネス」から、より高度な専門性と品質管理が求められる「本格的な宿泊業」へと移行する転換点を示しています。
この変化の中で、京都はその強力な観光集客力ゆえに、投資先としての魅力を決して失っていません。むしろ、大阪での新規参入が制限される状況は、次なる投資の分散先としての京都の価値を相対的に高めています。
しかし、成功のためには、簡易宿所や旅館業といった年間を通じて営業可能な形態を戦略的に選択し、煩雑な行政申請手続きや近隣住民への配慮という「見えないコスト」を適切に管理できる運営体制を構築することが不可欠です。
適切な手続きの遵守と近隣への誠実な配慮こそが、厳格な規制環境下にある京都という市場で、持続可能な民泊経営を実現するための成功の鍵となります。規制が強まる時代であるからこそ、事業者の「ブランド力」と「誠実な運営姿勢」が問われる時代になっています。大阪での投資機会制限を単なる制約と捉えるのではなく、質の高い宿泊サービスを提供する真の宿泊業者が評価される市場環境への移行と前向きに捉え、京都という魅力的な市場で長期的な成功を目指すべきでしょう。
[引用1]https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF1621T0W5A011C2000000/
[引用2]https://9stay.net/column/174
[引用3]https://www.city.kyoto.lg.jp/kankyo/cmsfiles/contents/0000265/265235/shiryo3-2.pdf


宿泊事業を取り巻く環境が、かつてないほど厳しさを増しています。建設現場や物件オーナーとの打ち合わせで必ず話題に上るのが、工事費の異常な高騰と金利の上昇です。「安く仕入れて、高稼働で回して、早期に投資を回収する」という従来の成功モデルは、もはや通用しなくなりつつあります。本記事では、建設・金融情勢の最新データをもとに、これからの時代を生き抜くための新しい考え方について解説します。
目次
日本の建設業界は現在、「令和の建設費高騰」と呼ばれる深刻な事態に直面しています。かつては数百万円で可能だったリフォームや、数千万円で収まっていた小規模物件の建築が、今ではその前提が根底から覆されています。
主要な建設資材の価格は、2021年1月と比較して2025年11月時点で建築部門全体で37%上昇しました[※引用1]。特に顕著なのが設備関連で、ガス管は2.1倍(114%増)、電線(高圧ケーブル)は1.8倍(86%増)という驚異的な上昇率を記録しています。
人手不足を背景とした労務費の上昇も深刻です。2025年3月から適用されている公共工事設計労務単価は、2021年当時と比較して全国平均で22.9%上昇しました。10年前と比較すると5割近く高くなっており、この「資材」と「労務」のダブルパンチにより、全建設コストは平均で26〜30%上昇しています。5年前と同じ予算で工事を発注することは、もはや不可能な状況です。
このコスト高騰は、宿泊業の人気エリアである京都市内などで特に顕著に現れています。物件を購入し、ある程度の質を担保したフルリノベーションを行うとなると、総額1億円を超えるケースが当たり前になってきました。一軒家のフルリノベーションに限っても、宿泊施設としての質を担保しようとすれば4,000万〜5,000万円の予算が必要です。予算を3,000万〜3,500万円に抑えようとすると、どこかで大きな妥協を強いられるのが現在の市場相場となっています。
建設費の高騰に加え、宿泊事業者を追い詰めているのが金利の上昇です。日本銀行は2025年12月19日、政策金利を0.75%程度に引き上げることを決定しました。これは1995年以来、約30年ぶりの高水準です[※引用2]。長期金利も2.0%台に到達するなど、長らく続いた超低金利時代は完全に終焉を迎えました。
金利が0.25%上昇するだけで、例えば5,000万円の借入(35年返済)の場合、年間で約7万円の負担増となります。宿泊事業のような多額の投資を必要とするビジネスにおいて、この金利上昇は収益性を直接圧迫します。物件価格の高騰と金利上昇が重なることで、個人が借り入れをして宿泊業に新規参戦することは、極めて難易度の高いレベルに達しています。
コストと金利が上がる一方で、市場の競争は激化しています。都市部を中心に民泊施設は急増しており、宿泊単価の下落傾向が見られるエリアも出てきています。また、大阪市のようにトラブル増加を背景に特区民泊の新規受付を停止する動きや、自治体による規制強化も相次いでいます。
これまで多くの運営者が稼働率(どれだけ予約が埋まっているか)を最優先事項としてきました。しかし、清掃費やリネン交換、管理委託料といった運営コストも上昇しており、売上の20〜30%が代行手数料として引かれるケースも珍しくありません。無理に稼働率を上げようとして宿泊単価を下げれば、現場は疲弊し、設備は傷み、利益は残らないという負のスパイラルに陥ります。「稼働率=正義」という考え方は、もはや終わりを迎えたと言えます。

予算の算出が極めて難しい今、投資すべきは高価な建材や豪華な設備だけではありません。知恵と工夫による「原価のかからない価値」こそが、これからの差別化の鍵となります。
物理的なコストを抑えつつ、顧客満足度を高めるためには、空間の見せ方と視線設計、動線・間取りの工夫、そして明確なコンセプト・ストーリーが不可欠です。面積が限られていても、光の採り入れ方や庭とのつながり、視線の抜けを設計することで、贅沢な空間を演出できます。使い勝手の良い動線は、宿泊者のストレスを減らし、リピート率向上に直結します。
「なぜこの宿に泊まるのか」という明確な物語は、SNSでの集客を強化し、広告費をかけずにファンを作る強力な武器になります。予算を妥協して中途半端なものを作ることは、宿泊単価の維持を困難にします。むしろ、特定のターゲットに深く刺さるコンセプトを設計し、「安売りしなくても選ばれる理由」を作ることが、コスト高騰時代における唯一の防御策です。
これからの事業計画において最も重要なのは、収益の最大化を目指す攻めの姿勢ではなく、不測の事態でも立ち行かなくならない守りの視点です。
かつては「いかに利益を出すか」が議論の中心でしたが、今は「いかなる状況でも赤字を出さない」ことが最優先です。無理な規模拡大を避け、運営コストを徹底的に見直す必要があります。稼働率80%を目指して単価を叩き売るのではなく、稼働率が50%であっても利益が出るような適正単価の維持にシフトすべきです。これにより、建物の摩耗を防ぎ、良質なゲスト層を維持することが可能になります。
最も重要なパラダイムシフトは、「儲かる民泊」から「返せる民泊」への転換です。物件価格と建設費が高騰し、金利が上昇している現在、帳簿上の利益よりも「毎月のローン返済を確実に継続できるか」という資金繰りの安定性が、事業の継続性を左右します。
建設現場で起きている「見積もりが想定を大幅に超える」「工期が延びる」「人手が足りない」といった事態は、一過性のトラブルではなく、構造的な変化です。この現実に目を背け、過去の成功体験に基づいた計画を立てることは、非常に大きなリスクを伴います。
今、宿泊事業者に求められているのは、原価のかからない価値を磨き上げ、派手な利益よりも確実な返済を重視する、地に足のついた経営感覚です。「稼働率が正義」の時代を脱し、単価維持と返済可能性を軸に据えたマインドシフトを行うこと。それこそが、令和の荒波の中で宿泊事業を継続させ、生き残るための道だと考えられます。
[引用1]https://digital-construction.jp/column/2980
[引用2]https://www.juken-net.com/main/feature/rising-interest-rates/


2025年の訪日外国人客数が史上初めて4,000万人を突破し、消費額も過去最高の約9兆5,000億円を記録しました。しかし、この華々しい数字の裏側で、古都・京都をはじめとする観光地は深刻な「オーバーツーリズム」と「二重価格」導入の議論に揺れています。4,000万人時代の実態と、京都で起きている変化、そして専門家が指摘する日本の観光産業の未来について解説します。
2026年1月、日本政府は歴史的な数値を発表しました。2025年の訪日外国人客数が推計で約4,270万人に達し、史上初めて年間4,000万人を突破したのです[引用1]。消費額も約9兆5,000億円と過去最高を記録し、日本経済における外貨獲得の柱として、自動車輸出に次ぐ規模へ成長しています。
この記録的な増加を牽引したのは、記録的な円安と日本の観光地としての根強い人気です。コロナ禍前の2019年水準(約3,188万人)を大きく上回り、特に欧米やオーストラリアからの旅行者が大幅に増加しました。滞在日数が長く、多くの地域を周遊する傾向がある層の拡大が、消費額の押し上げに寄与しています。
一方で、かつて最大市場だった中国からの客足には急ブレーキがかかりました。2025年12月の中国からの訪日客数は前年同月比で約45%も減少しています[引用2]。これは、高市早苗首相の発言に端を発した日中関係の悪化や、中国政府による渡航自粛要請が影響したと見られます。それでも全体数が過去最高を記録した事実は、日本のインバウンド市場が「中国頼み」から脱却し、多角的な構造へ転換したことを示しています。
この国家的ブームの最前線に立つ京都市では、影響が極めてシビアな形で現れています。清水坂や嵐山といった主要観光地は外国人旅行者で溢れかえり、市民生活への影響が限界に達しつつあります。
京都市観光協会のデータによると、2025年11月の京都市内主要ホテルの外国人延べ宿泊者数は前年同月比8.5%増と好調を維持していますが、対照的に日本人の延べ宿泊者数は15.3%も減少しました[引用3]。これは、インバウンド需要による宿泊費の高騰や混雑を敬遠し、日本国内の旅行者が京都を避けている現状を示しています。

円安による割安感を享受する外国人観光客と、物価高に苦しむ日本人や地域住民。この経済格差を是正し、オーバーツーリズム対策の財源を確保する手段として、京都では「二重価格」の導入が現実味を帯びています。
京都市内のある老舗旅館では、すでに事実上の二重価格を導入しています。訪日客向けの予約仲介サイト経由の料金を、国内向けサイトより最大1.5倍高く設定しているのです。旅館側は「外国語対応などのコストが発生している」ことを理由に挙げています。
飲食店でも、海鮮や和牛などの高級食材を用いた高単価メニューを「インバウンド向け」として外国語でPRする動きが加速しています。牛丼チェーン「松屋」ですら、観光地店舗では高単価メニューを券売機で「インバウンド向けお勧め」と案内しています。
この動きは民間にとどまりません。京都市は市バスにおいて、市民と観光客の運賃を分ける「市民優先価格」の2027年度内実現を目指しているほか、二条城の入城料体系の見直しも模索中です。さらには、政府レベルでも国立美術館・博物館での二重価格導入が検討されています。
米国からの旅行者が「日本はホテルも食事も何でも安い。地元客と多少の料金差があっても気にしない」と語るように、外国人旅行者側の抵抗感は意外に少ないという見方もあります。しかし、観光業界内には「国籍だけを理由に区別するのは差別と受け取られかねない」という慎重論も根強く残っています。
4,000万人という数字は、政府が掲げる「2030年に6,000万人」という目標に向けた通過点に過ぎません。しかし、専門家からは現在の延長線上での拡大に強い懸念が示されています。
現在の観光のあり方は、かつての高度経済成長期における公害問題に近づきつつあります。観光客の急増により、コンビニのトイレ利用マナーの悪化やゴミのポイ捨てなどが目立ち、地域住民の生活負担は確実に増しています。現行インフラでは受け入れ人数に限界があり、数を追い続ければ、良識あるリピーターが離れ、質の低い観光客ばかりが集まる状況になりかねません。結果として、日本の観光地としての価値そのものが損なわれるリスクがあります。
一方で、日本の観光政策には経営的な視点が不足しているとの指摘もあります。重要なのは客数の多さではなく、一人当たりの消費額を高め、地域経済に持続的な恩恵をもたらすことです。人数を抑えつつ消費の質を高める戦略へと転換しなければ、観光は成長産業ではなく重荷になってしまうでしょう。
JTBの予測では、2026年の訪日客数は中国・香港市場の減速を織り込み、2025年比で2.8%減の約4,140万人になると見込まれています[引用4] 。右肩上がりの成長が一旦落ち着くこのタイミングこそ、日本が「観光立国」としてのあり方を再考する好機かもしれません。
「二重価格」は単なる値上げではなく、特別なガイドや体験といった付加価値とセットで納得感を得る形での導入が求められます。また、特定の観光地に集中する「オーバーコンセントレーション(過剰集中)」を解消し、地方へ誘客するための戦略的な「観光地経営」が不可欠です。
4,000万人突破は確かに祝うべきマイルストーンです。しかし、それは同時に、京都をはじめとする地域社会が「住んでよし、訪れてよし」のバランスを維持できるかの瀬戸際に立たされていることを示しています。地域住民の日常生活が観光客によって脅かされるような状況が続けば、観光地としての持続可能性は失われてしまいます。
2030年に向けて、数合わせの誘致ではなく、地域住民の生活を守りながら稼ぐ力を高める持続可能なモデルへの転換が急務となっています。観光客の「量」ではなく「質」を重視し、地域社会と調和した観光産業の実現こそが、真の意味での「観光立国」への道となるでしょう。
[引用1]https://news.yahoo.co.jp/articles/10576e93bcb5ca97dcb81e34714e2ccbb68ae2d3
[引用2]https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2026-01-20/T954FKT9NJLS00
[引用3]https://www.travelvoice.jp/20260121-159028
[引用4]https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA1940O0Z10C26A1000000/


2026年の日本のインバウンド市場は、訪日外客数が数年ぶりに減少に転じる「踊り場」の時期を迎える一方で、消費額の増大と持続可能な観光への質的転換を目指す重要なターニングポイントになると予測されています。本記事では、政府の過去最大の予算編成、市場を揺るがす中国リスク、そして人手不足や供給制約といった構造的課題を軸に、2026年のインバウンド需要の見通しを詳説します。
目次
JTBの予測によると、2026年の訪日外国人客数は前年比2.8%〜3%減の4,140万人となる見通しです[引用1]。2025年が過去最高の4,260万人に達すると推計されている反面、2026年は新型コロナウイルス禍の影響を除けば、2011年以来15年ぶりに減少に転じる見込みとなっています。
この減少の最大の要因は、訪日客の約2割から3割を占める中国および香港市場の停滞です。日中関係の悪化を受け、中国政府が日本への渡航自粛を呼びかけたことで、団体旅行を中心に急ブレーキがかかっています。
一方で、欧米豪からの訪日客は引き続き増加傾向にあります。これらの地域の旅行者は滞在期間が長く、1人当たりの消費額も多いため、客数が減少しても訪日外国人全体の消費額は前年比0.6%増の9兆6,400億円と、微増ながら過去最高を更新するとの予測も出ています[引用2]。
2026年の需要を占う上で避けて通れないのが、政治的背景による中国市場の冷え込みです。2025年11月、当時の首相による台湾情勢に関する発言を巡り、中国政府は日本への渡航自粛を公告しました。この影響は甚大で、日本行き航空券のキャンセルは一時54万件を超え、航空便の減便や運休が相次いでいます。
特に中国との結びつきが強い関西圏や、冬の観光地として人気の高い東北・北海道では深刻な影響が出ています。大阪の観光バス予約が激減し、「コロナ禍並み」の落ち込みを見せる事業者も現れています。百貨店の免税売上高が前年割れとなり、特に中国人客の売上が4割近く減少するケースも報告されています。また、京都市内では、中国客のキャンセルにより宿泊料金が大幅に下落し、1泊1万円未満のホテルが続出する事態となっています。
過去、2012年の尖閣諸島問題の際にも中国からの旅行者は約25%減少し、その影響は約1年続きました[引用3]。今回の対立が長期化すれば、日本経済への損失は1.2兆円から1.7兆円規模に達するとの試算もあります。

客数の伸び悩みには、需要側だけでなく供給側のボトルネックも影響しています。
第一に深刻な人手不足です。空港の旅客係員数はコロナ前を依然として下回っており、これが国際線の増便を阻む要因となっています。ホテル業界でも、客室稼働率が安定運営の上限とされる85%に近づいており、「供給力が天井に接近している」との指摘があります。
さらに、建設資材の高騰や人手不足により、ホテルの開発計画が白紙になったり、建て替え工事が遅延したりする事例も目立っています。世界旅行ツーリズム協議会は、2035年の観光従事者数は必要水準を29%下回ると予測しており、政府が掲げる「2030年に訪日客6,000万人」という目標の達成には、この供給制約の解消が急務となっています[引用4]。
こうした課題に対応するため、政府は2026年度の観光庁予算案として、前年度比2.4倍となる過去最大の1,383億4,500万円を計上しました[引用5]。この大幅増額を支える財源は、国際観光旅客税(出国税)の1,000円から3,000円への引き上げです。
予算の柱は3点に集約されます。第一に、オーバーツーリズム対策と住民生活の確保(317億円)です。「観光客は増えたが、地域は良くなったのか」という問いに対し、住民生活との調和を図る施策に重点が置かれています。前年度比8.34倍の100億円をオーバーツーリズム対策に計上し、混雑状況の可視化、予約システムの導入、パーク&ライドの整備などを面的に支援します。また、待ち時間短縮のため、入管と税関の手続き情報を同時に取得する「共同キオスク」の導入や生体認証の強化に約198億円が投じられます。
第二に、地方誘客の推進による需要分散(749億円)です。予算の半分以上が、東京・大阪・京都といった「ゴールデンルート」への集中を是正するために充てられます。地方空港の機能強化(28.83億円)や、ローカル鉄道を観光資源として活用する新規事業(46億円)などが盛り込まれました。さらに、国立公園の環境整備(178億円)や文化財の公開(223億円)を促進し、滞在長期化と消費拡大を狙います。
第三に、観光産業の活性化と双方向交流(68億円)です。インバウンド偏重を是正し、日本人の海外旅行も支援する「双方向交流」の予算が25倍の5億円に増額されました。また、「日米交流の強化」(3億円)や、大阪・関西万博の成果を関西全域に広げる「万博レガシー活用」(2.5億円)などの新規事業が始動します。
2026年のインバウンド戦略において注目すべきは、単なる客数の積み上げではなく、「消費単価の向上」と「データの活用」へのシフトです。
最新のデータによれば、インバウンドの1人当たり消費額(約22万円)は、日本人の国内旅行(約4.6万円)の約4.7倍に達します[引用6]。特に京都などの主要観光地では、インバウンドがもたらす経済効果が地域の維持に不可欠となっています。一部で叫ばれる「インバウンド悪玉論」に対し、専門家はインバウンドをゼロにして日本人客でその経済損失を補おうとすれば、かえって休日の混雑(オーバーツーリズム)が深刻化すると指摘しています。
そのため、2026年度予算では「地域の観光振興の効果測定」に新たに1.14億円が計上されました。ビッグデータを活用して施策の有効性を定量的に検証し、効率的な誘客と地域経済への波及を目指す「エビデンスに基づく観光施策」が本格化します。
2026年のインバウンド需要は、中国市場の不透明感や国内の供給制約により、量的な拡大にはブレーキがかかる見通しです。しかし、これは日本が「数」を追うフェーズから、「地方分散」「高付加価値化」「住民生活との調和」という質的な成熟を遂げるための重要な準備期間とも言えます。
3,000円への旅客税引き上げによる安定財源を、いかに実効性のあるオーバーツーリズム対策や地方インフラ整備に繋げられるか。そして、特定国に依存しない市場ポートフォリオの多角化を進められるか。2026年は、日本の観光立国としての真価が問われる1年になるでしょう。
[引用1]https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC050S30V00C26A1000000/
[引用2]https://www.yomiuri.co.jp/economy/20260109-GYT1T00288/
[引用3]https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC050S30V00C26A1000000/
[引用4]https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC050S30V00C26A1000000/
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