民泊情報ブログ
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日本の観光業界は、かつてない変化の波に直面しています。インバウンド客の急増により、京都では外国人宿泊者が日本人を上回るなど、宿泊業界の構造そのものが大きく揺れ動いています。本稿では、京都の転換点を起点に、万博効果、課題と対策、今後の戦略的方向性までを詳しく解説します。
日本の観光業界は今、歴史的な転換期を迎えています。年間4,000万人を超えるペースの訪日客数は 、まさに「インバウンドバブル」の再来を象徴しており、その最も顕著な変化が京都市で起きています。
2024年、京都市を訪れた外国人観光客は 前年比53%増の1,088万人となり、コロナ禍前の過去最高だった2019年の886万人を大幅に上回りました。しかし、この数字以上に衝撃的だったのは、外国人宿泊客数が初めて日本人宿泊客数を逆転したという事実です。日本人宿泊客数が14%減の809万人に対し、外国人宿泊客は53%増の821万人に達し、宿泊業界の構造そのものが変化していることを示しています。
地域別では、中国が2.6倍、台湾が2割増とアジア系観光客が過半を占める一方、米国が6割増、オーストラリアが3割増など欧米豪からの訪問も大幅に増加しました。この結果、京都市全体の観光客数は前年比11%増の5606万人、観光消費額は24%増の1兆9075億円と過去最高を更新しています。

出典:京都観光総合調査
この変化は宿泊料金にも劇的な影響を与えています。2025年4月、京都市内の主要 ホテルの平均客室単価は統計開始以来初めて3万円を超え、3万640円を記録しました。客室稼働率も89.5%とコロナ禍以降最高水準に達し、外国人宿泊客の比率は78.1%という過去最高の数値を示しています。
大阪・関西万博の開幕は、関西全体の宿泊需要をさらに押し上げる要因となっています。万博期間中の大阪市内では、最高級ホテルから ビジネスホテルまで軒並み価格が高騰し、ビジネスホテルでも1泊2万円を超える施設が続出しています。
アパグループが運営する大阪市内26店舗では、4月19 日から5月4日までの週末平均客室予約率が前年より約25ポイント高い70%を記録し、週末の客室単価は約2万円と2024年比4割上昇しています。「リーガプレイス肥後橋」でも、同期間の平均客室単価が前年実績より3割上昇するなど、価格高騰は全体的な傾向となっています。
この大阪市内の宿泊需要逼迫は、隣接地域への波及効果も生んでいます。神戸ポートピアホテルでは、大阪のホテルが満室になるにつれて兵庫県に滞在先を求める動きが増加し、京都市内の「ホテルオークラ京都」でも万博開幕を控えた週末の客室稼働率が90%を超えています。
宿泊予約サイト「じゃらんnet」のデータでは、大阪府内の万博会期中宿泊予約数が2月時点で前年同期比2倍を超えており、ゴールデンウィーク中の国内人気旅行先で大阪府が3位に浮上するなど、広範な宿泊需要の拡大が確認されています。
インバウンド活況の一方で、宿泊業界は複数の課題に直面しています。まず、風評被害の影響が挙げられます。2025年5月には香港からの客数が11.2%減少しま したが、これはSNSを中心に日本での災害発生に関する根拠不明のデマが拡散したことが原因とみられています。関西国際空港と香港を結ぶ便では約1割の運休が決定し、仙台空港でも同様の減便・運休が続いています。
円相場の変動も重要な要因です。1ドル=144円前後と2024年冬比で円高方向に進んでいることで、インバウンド消費に変化が見られます。百貨店の免税品売上では、高級ブランド品から化粧品など低単価品への購買移行が確認されており、高島屋の事例では消費意欲の鈍化が報告されています。
訪日外国人増加に伴う「オーバーツーリズム(観光公害)」への対策として、政府・自民党内では税負担強化の議論が活発化しています。具体的には、消費税免税措置の原則廃止と国際観光旅客税(出国税)の引き上げが検討されています。
消費税免税廃止論の背景には、家電や医薬品の大量購入が「目指す観光立国の姿とは異なる」こと、地方経済への貢献が少ないこと、転売目的の不正が多いという問題があります。政府は2026年11月から「リファンド方式」への移行を予定していますが、「不正が巧妙化するだけで実効性に欠ける」との指摘もあります。
国際観光旅客税についても、現在の1人 1000円が米国(約3100円)、エジプト(約3500円)、オーストラリア(約6500円)など他国と比べて少ないとして、引き上げを求める声があります。
一方で、これらの課税強化には慎重論も存在します。英国が2020年に外国人観光客向け付加価値税免税措置を廃止した際、高級ブランド店の売上が落ちたとの見方があり、小売業への打撃が懸念されています。また、政府の2030年訪日外国人6,000万人目標との整合性も問題となっています。
地方自治体レベルでは独自の取り組みが進んでいます。大阪府は2025年9月から 宿泊税を最大200円引き上げ、対象を1泊7,000円以上から5,000円以上まで拡大します。京都市も宿泊税の上限額を1人1泊1,000円から1万円に引き上げる方針を決定し、2026年3月以降の運用を目指しています。
これらの状況を踏まえ、宿泊業界が取り組むべき戦略として以下の点が重要です。
地方分散と客単価向上の両立が第一の課題です。主要都市のホテル逼迫を緩和し、地域経済を活性化するには、観光客を地方へ誘致しつつ、滞在中の消費を促進する取り組みが不可欠です。これにより、特定エリアへの集中によるオーバーツーリズム問題の分散も期待できます。
価値提供の多様化も重要な要素です。円高による割安感の低下や消費行動の変化に対応し、価格競争力だけでなく、体験価値やユニークな宿泊体験を提供することで、高価格帯のニーズを持つ層を維持する必要があります。
情報発信とアクセス改善は地方誘客成功の鍵となります。地域の魅力を効果的に発信し、観光地へのアクセスを改善することで、風評被害対策としての正確な情報発信も重要な要素となります。
持続可能な観光モデルの構築も避けて通れない課題です。課税強化論や宿泊税引き上げの動きを単なるコスト増と捉えるのではなく、質の高い観光体験を提供し、地域環境や住民生活との調和を図る持続可能な観光モデルを構築していく必要があります。
現在の日本宿泊業界は、記録的な訪日外国人数の増加と京都における外国人宿泊客数の日本人宿泊客数逆転という歴史的局面にあります。大阪万博による需要波及など高い需要が継続する見込みである一方、円高の影響、オーバーツーリズム、課税強化の議論といった課題も顕在化しています。
宿泊施設には、これらの変化と課題に対応した戦略的運営が求められます。地方への誘客、客単価向上、多様なニーズへの対応、そして持続可能な観光の推進が、今後のインバウンド市場における成功の鍵となるでしょう。単なる宿泊提供を超えた価値創造により、業界全体の持続的成長を実現することが大切です。


日中関係の悪化に伴う中国路線の大量減便は、日本の観光経済に一時的な激震をもたらしました。しかし、この政治的な対立が引き起こした航空市場の空き枠は、単なる損失に留まらず、日本の国際航空ネットワークが特定の市場への依存から脱却し、より強靭で多様な構造へと進化するための歴史的な好機をもたらしています。失われた中国便の需要を補うだけでなく、その発着枠を巡って世界中の航空会社が激しい競争を繰り広げており、日本の空港が新たなグローバルハブとしての地位を確立する可能性が開かれています。
日中関係の悪化に伴う中国路線の大量減便により、日本の観光経済は一時的な激震に見舞われています。中国政府による日本への渡航自粛要請が発出された結果、日中間の航空便は大規模な運休に見舞われました。2025年11月27日朝の時点で、12月に中国から日本へ運航予定だった5548便のうち、16%にあたる904便が運休を決定しました[引用1]。この減便は座席数にして約15万6000人分に相当し、わずか数日間で3倍超に拡大しています。
この影響は、特に関西国際空港に集中しました。日本の空港への到着便で見ると、関空着の減便数は626便と最も多く、12月の第2週には就航便数が予定の525便から348便に減少する見通しとなっています。
来年以降も平均で約28%の減便が続く可能性が示されています。関空の国際線のうち中国便が占める割合は、当初の冬ダイヤで34%と、成田空港の17%と比較して高い依存度を示していました。関空は地方路線が多く、団体旅行客の取り込みに成功してきましたが、団体需要の縮小が直撃する形となり、長竜航空の全便運休や、長沙、福州など6地点への就航便がなくなるなど、具体的な影響が出ています。
航空輸送に詳しい専門家は、LCC(格安航空会社)は搭乗率が悪いと赤字になりやすく、「見切りをつけるのも早い」と解説しており、深圳航空や春秋航空といった地方系やLCCの減便・運休が目立っています。
観光地の宿泊予約データにも影響が直ちに反映されました。宿泊管理システムを提供するtriplaによると、要請が出た後の1週間(11月21〜27日)の中国からのホテル予約件数は、要請前の週(11月6〜12日)と比較して全国で約57%の減少となりました[引用2]。特に来訪者が多かった関西地方の危機感は強く、大阪観光局の聞き取り調査では、12月末までの中国人の宿泊予約の5〜7割でキャンセルが発生していることが判明しました。京都市観光協会も市内ホテルの一部でキャンセルを指摘しており、中国人宿泊数が半減した場合、11月の予測客室稼働率は前年同月比3ポイント減になると見込んでいます。事態が長期化し、来年2月の春節の大型連休にまで影響が及べば、地域経済を大きく下押しする要因になりかねません。
しかし、中国便の減便によって生じた発着枠の空きは、日本の航空市場の構造を変革する貴重な資源となっています。日本の大型市場へのアクセスを常に求めている世界の航空会社にとって、この空き枠は新規参入や増便の絶好の機会と捉えられています。
特に強い需要を示しているのは、米国、欧州、アジアの主要なフルサービス航空会社です。米国系ではデルタ航空、ユナイテッド航空、アメリカン航空、欧州系ではルフトハンザ、AF/KLM、ブリティッシュ・エアウェイズ、そしてアジア系では韓国系、東南アジア系の航空会社が挙げられます。これらの航空会社は、日本の大型市場へのアクセスを求めており、空き枠が出ればすぐに応募し、運航実績を高めようとしています。
羽田空港において中国系航空会社の減便が7便に留まり、比較的影響が小さいのは、羽田路線は安定的な需要があり、発着枠を巡る競争が激しいため、航空会社が運航実績の低下による発着枠返上を避けるため、減便に消極的になっているからだと分析されています。この事実は、日本の主要空港の発着枠が持つ高い価値を裏付けています。
発着枠の空きは、LCC(格安航空会社)にとって特に大きな価値を持ちます。ピーチ、ジェットスター、ZIPAIR、韓国LCC各社、東南アジアLCCなど、多岐にわたるLCCが枠獲得に動いています。LCCは、利益構造的に「回数を飛ばす」ことで成立しており、発着枠が空くと迅速に枠獲得に動く傾向があります。LCCの増便は、若年層や個人手配旅行客の訪日需要を喚起し、団体客の減少を補う上で重要な役割を果たします。特に国際線外国人旅客数でしばしば成田を超える成長を遂げてきた関空は、2012年に国内初の専用ターミナルを整備するなどLCCの積極誘致策を打ち出してきた歴史があり、今回の空き枠もLCCのネットワーク強化に活用される可能性があります。
さらに、発着枠の空きは、これまで参入が難しかった新興市場からの新規直行便開設のチャンスをもたらします。観光地への直行便のニーズは強く、日本路線を拡大中のインドからは、ビジネス客や富裕層の観光需要の取り込みが期待できます。また、ベトナムやインドネシアからの新規参入も期待されています。関空を運営する関西エアポートは、長距離便の拡充を将来的な目標としており、欧米やインドネシア、インドなどへの長距離便の拡充を目標としています。今回の中国減便は、東アジアの観光需要に依存した積年の課題を見直す契機となり、ネットワーク再強化のチャンスを関西エアポートに与えています。

中国便の減便による代替需要の獲得は、単に失われた座席数を補填するだけでなく、日本の航空ネットワーク全体を高度化させる効果をもたらします。
日本の主要空港を経由地として利用する「乗り継ぎ需要」は、日本の航空市場の市場規模を拡大する上で非常に重要です。ANAやJALといった日本のフルサービスキャリアは、北米から東京を経由してアジアへ、欧州から東京を経由してアジアへという日本経由の乗り継ぎ需要を増やし、空港をアジアへのハブ(拠点)として機能させることを目指しています。国際的な旅客の流れにおける日本の重要性が増すことで、不安定な一国依存から脱却し、より強靭な国際ネットワークの基盤を構築できます。
羽田などの主要空港で国際線の発着枠が増加し、欧米やアジアの大手航空会社が運航を拡大すると、その連鎖として国内線の接続利便性も向上する可能性があります。国際線利用客の利便性向上に伴い、国内地方路線との乗り継ぎがスムーズになれば、地方都市への観光需要が増加し、地方経済にも恩恵が波及します。これは、地方の観光産業を活性化させる重要な要因となります。
また、旅客便の発着枠の柔軟な活用は、旅客需要だけでなく、国際物流の基盤となる貨物便の需要増にも対応する機会を提供します。安定的な物流インフラの確保は、サプライチェーンの安定化にも繋がり、日本の経済活動全体を支える重要な要素です。
日中対立に端を発した中国便の大量減便は、日本の観光・航空業界に大きな痛手を与えました。特に、関空のように中国依存度の高かった空港では、減便が長期化すれば深刻な打撃となりかねません。
しかし、この危機は、日本の航空ネットワークが長年の課題であった「東アジアの観光需要への依存」を見直し、欧米やインド、東南アジアといった長距離かつ多様な需要を取り込む構造へと変化する決定的な機会を提供しています。空いた発着枠を、市場アクセスを強く求める国際的な航空会社や、機動性の高いLCCに活用させることで、日本の空港は不安定な政治的リスクに左右されにくい、多様性と弾力性のある国際ネットワークを構築できる可能性があります。一時的な痛みは伴うものの、結果的に、日本の国際的な地位と経済の安定性を高めることになるでしょう。
[引用1]https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE255CA0V21C25A1000000/
[引用2]https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC290C10Z21C25A1000000/


日本政府が2026年度にも訪日ビザ手数料を欧米並みに引き上げる方針を発表しました[引用1]。これは1978年以降、約50年間据え置かれてきた料金体系の大幅な見直しとなります。
現在、日本の一次ビザは約3,000円、数次ビザでも約6,000円と、主要7カ国(G7)の中で突出して安い水準にあります。一方、米国は185ドル(約28,000円)、英国は177ドル(約26,000円)、欧州域内で移動の自由を保障するシェンゲン協定加盟国(フランス、ドイツ、イタリアなど)は一律90ユーロ(約15,000円)と、日本の5倍から9倍の手数料を設定しています。
今回の値上げには複数の目的があります。まず、増加する訪日外国人に対応するための人員確保や事務処理費用の増大に対応すること。そして、深刻化するオーバーツーリズムの抑制です。オーバーツーリズムとは、観光客が地域の受け入れ能力を超えて訪れることで、住民の生活や観光体験の質に悪影響を及ぼす現象を指します。
政府は手数料の徴収時期も、現在のビザ発給時から申請時へと変更することを検討しています。これにより安易な申請を防ぎ、事務負担の軽減を図る狙いがあります。
2024年のビザ発給件数を見ると、中国人向けが全体の約7割(524万件)を占め、ベトナム、フィリピンと合わせた上位3カ国で9割弱に達しています[引用2]。これら120カ国以上の短期滞在ビザ必要国からの訪問者にとって、手数料の大幅引き上げは確実に経済的ハードルを高めることになります。
しかし、ビザ値上げだけでオーバーツーリズムが解決するわけではありません。政府はより包括的なアプローチを検討しています。国際観光旅客税(出国税)を現在の1,000円から3,000円程度へ引き上げる案や、訪日外国人による消費税免税措置の原則廃止も議論されています。これらの背景には、家電や医薬品の大量購入による転売問題など、「日本が目指す観光立国の姿とは異なる」状況への懸念があります。
これらの施策を組み合わせることで、価格に敏感な層や安易な観光目的の訪問者を抑制し、より質の高い観光への転換を図ろうとしています。ただし、負担増が過度になれば、日本への訪問意欲そのものを削ぐリスクもあります。政府内には「外国人が来なくなってみんな慌てるのではないか」という慎重論も存在しており、バランスの取れた施策運営が求められています。
オーバーツーリズムの影響を最も強く受けているのが京都市です。市営バスが観光客で混雑し、住民が乗車できない事態が日常化していました。この状況に対し、京都市は独自の対策を次々と打ち出しています。
2024年には、京都駅から主要観光地に直行する「観光特急バス」の運行を開始しました。運賃は市バスの約2倍の500円に設定し、観光客を特急バスへ誘導することで、市民が利用する路線バスの混雑緩和を図っています。
さらに松井孝治京都市長は、市バス・地下鉄で市民と観光客の運賃に差をつける「市民優先価格」の導入を公約に掲げ、国土交通省との協議を進めています[引用3]。これは住民の移動手段を確保しながら、観光収入も維持するという難しい課題への挑戦です。
最も大胆な施策は、宿泊税の大幅引き上げです。2026年3月以降、上限額を現在の1人1泊1,000円から10,000円へと10倍に引き上げる方針を決定しました。観光による負荷を軽減しながら収益を確保する戦略です。

訪日外国人の消費額は、三大都市圏(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫)に全体の8割近くが集中しています。京都府は2023年4月から12月の消費額が1,000億円を超えるトップ6都道府県の一つで、インバウンド消費は地域経済の重要な柱となっています。
ビザ手数料の値上げが訪問客の大幅減少につながらないという政府の見込みもありますが、各種負担増の積み重ねが「冷や水」となる可能性は否定できません。高島屋などの百貨店からは「訪日客数の減少は百貨店利用者数にも影響する」との懸念の声が上がっています。特に中国人観光客に依存度の高い小売業への影響は無視できません。
一方で、政府は訪問先で100万円以上を消費する富裕層の地方誘致を推進し、観光地・観光産業の高付加価値化を目指しています。これは2030年に訪日外国人6,000万人という目標を掲げながらも、単純な量的拡大ではなく、質的向上を重視する方向への転換を示しています。
ビザ手数料値上げによる歳入の一部は、オーバーツーリズム対策や審査厳格化の費用に充てられる予定です。さらに大幅な収入増が見込まれる場合には、高校授業料の無償化拡大の財源とする案も政府内で議論されており、観光収入を国民生活の向上に還元する仕組みづくりも進められています。
訪日ビザ手数料の値上げは、単なる料金改定ではなく、日本の観光政策の大きな転換点となる可能性があります。約50年間維持されてきた低価格政策から脱却し、国際水準に合わせることで、適正な対価を徴収しながらオーバーツーリズムの抑制を図る狙いがあります。
京都では、すでに独自の対策が進められており、国の施策はこうした地方の取り組みを後押しする形となります。しかし、観光立国としての成長目標と、住民生活の質の確保、そして地域経済の持続可能性という三つの要素のバランスをどう取るかは、今後の大きな課題です。
重要なのは、徴収した手数料や税収を観光インフラの整備やオーバーツーリズム対策に確実に還元し、観光客と住民の双方にとってより良い環境を作ることです。今回の値上げが、日本観光の質的向上と持続可能性の確保につながるかどうか、その成否は今後の施策運営にかかっています。
[引用1]https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA0667H0W5A800C2000000/?n_cid=SNSTW005
[引用2]https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA0667H0W5A800C2000000/?n_cid=SNSTW005
[引用3]https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC291R40Z20C24A6000000/


京都の宿泊市場は、市街地の高収益エリアだけで語れない時代に入りました。郊外民泊は「不便さ」を弱点ではなく価値へ転換し、古民家再生や体験型観光を通じて独自の収益モデルを築きつつあります。過疎化対策や地域振興にも直結する新しいビジネスとして、いまその可能性が急速に広がっています。
目次
京都市街地の中心部、特に中京区の四条・烏丸・河原町・御所周辺、下京区の京都駅・四条烏丸、東山区の祇園・清水といったエリアは、主要な交通拠点や観光資源が密集しています。そのため、国内外からの旅行者にとって利便性が極めて高く、高い稼働率と安定した収益が見込めます。
一方、京都市の農山村地域に位置する農家民宿は、北区・左京区・右京区京北などに点在しており、その立地の特性上、市街地に比べて交通インフラや通信環境の面で不便さが伴うことが課題となります。
しかし、新型コロナウイルス感染拡大下においては、この関係に変化が見られました。都市部の宿泊施設が三密を避けにくい状況にあったのに対し、郊外や農山漁村地域の古民家などを活用した一棟貸しの施設は、他者との接触機会を大幅に減らせるため、比較的安全な宿泊先として注目を集めたのです。Go To トラベル事業のような支援策が適用された際、比較的高額な宿泊料金となる一棟貸し施設に人気が集まった可能性も指摘されています。これは、郊外民泊が危機的な状況下で安全性を付加価値として収益に結びつけた例と言えます。
収益構造は、エリアの主なターゲット層と需要の変動期によって大きく異なります。市街地中心部の宿泊施設は、インバウンドや個人観光客の年間を通じた安定的な需要に支えられていました。
一方、郊外や農村地域の農泊施設で以前から中心的だった教育体験旅行型農泊は、春先の4月から5月に需要が集中する傾向があり、感染症拡大のような外的ショックに対してビジネスモデルとしての脆弱性が露呈しました。2020年の緊急事態宣言時には、教育体験旅行の集中期と重なったため、メインターゲットの変更が困難な地域では農泊がほぼ中止状態となりました。
また、新型コロナ感染拡大のショックは、農泊の宿泊者数減少率が一般的な宿泊者数よりもやや大きく下押しする傾向が見られました。これは、農家民宿の多くが経営主の母屋に宿泊し交流をメインとするため三密を避けにくかった点や、宿泊客が感染者数の少ない農山漁村地域への感染拡大を懸念して訪問を自粛した意識が強く働いた可能性が考えられます。
この課題に対し、郊外の農泊地域では、個人旅行客の取り込みやマイクロツーリズムへのシフトが見られ、長崎県西海市の事例のように、ワーケーションなどの新たな需要創出に取り組む動きも出ています。

市街地の中京区や東山区などでは、歴史的建造物や商業施設が相互に連携し、高い収益効率を生み出しています。これに対し、郊外の農泊施設は、収益効率を最大化するために立地の不便さを補って余りある固有の地域資源を活用することが不可欠です。
京都府の農家民宿エリア[引用1]である中丹地域の綾部市・福知山市・舞鶴市では、築100年の古民家などの伝統的な日本家屋の美しさと、オーナー家族との温かい交流が観光資源となっています。また、農業体験、そば打ち体験、薪割り体験、星空鑑賞など、その地域でしか得られない多様な体験コンテンツが提供されています。
これらの体験は、都市住民が関心を持つ傾向にある農業体験や調理体験、工芸品作りといった活動をセットで提供することで、滞在時間の延長や満足度向上に繋がり、結果的に収益効率を高めます。実際に、農山漁村滞在型旅行を行った旅行者の大規模アンケート調査でも、農業体験、地元住民との交流、農家民泊・農家民宿を同一人物が体験する傾向が強く、これらを組み合わせたサービスの提供が効果的であると示唆されています。
また、京都府京丹波町の事例では、京都市内や天橋立、舞鶴、丹波篠山などへ約30分でアクセス可能な立地を活かし、広域観光の拠点として利用される戦略も取られています。単に観光資源そのものとの距離が近いだけでなく、複数の観光地を結びつける戦略的な距離感が収益に貢献しているのです。
過疎化が進む郊外・農山漁村地域において、民泊は地域資源を掘り起こし、持続可能な発展を目指すための有効な手段となり得ます。
郊外では、築100年を超える古民家が空き家問題として存在しますが、これらをリノベーションし民泊施設として活用することで、景観維持や資産価値の低下防止につながります。京都府綾部市の「Seventh Home」や福知山市の「ふるま家」のように、古民家の雰囲気を残しつつ水回りなどを改修し、快適な滞在空間を提供している成功事例があります[引用2]。
また、郊外民泊は、都市からの観光客や移住希望者に対し、農山漁村の生活や自然を体験する機会を提供し、一時的な訪問者だけでなく、地域と継続的に関わる関係人口の増加につながります。旅行後も地域産品の取り寄せやふるさと納税を行う割合が高い層がいることが確認されており、交流が継続する基盤となり得ます。
京都市は、農林漁業体験を通じた地域活性化と副収入確保を目的として、平成27年3月から政令指定都市で初めて農家民宿開業に対する規制緩和の運用を開始しました[引用3]。これにより、北区の雲ケ畑や左京区の久多といった山間部で、林業体験や蕎麦打ち、藁細工などの体験を提供する農家民宿の開業が推進されています。
郊外民泊が持続的なビジネスとして成立するためには、地域ぐるみの運営が鍵となります。長崎県西海市雪浦地区の例では、古民家農泊施設が宿泊業だけでなく、地域住民も利用できるコミュニティ拠点としての役割も担うことで、地域外客に過度に依存しない多面的な効果を発揮しています[引用4]。
このように、京都の郊外民泊の可能性は、単なる宿泊提供から、地域経済、文化、福祉、そして空き家対策といった複合的な地域運営ツールへと進化しつつあり、市街地とは異なる次元での価値創出を目指しているのです。
[引用1]https://www.uminokyoto.jp/feature/detail.php?spid=22
[引用2]https://www.uminokyoto.jp/feature/detail.php?spid=22
[引用3]https://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/page/0000212881.html
[引用4]https://www.maff.go.jp/primaff/kanko/project/attach/pdf/220301_R04ict2.pdf
京都の宿泊市場は、市街地の高収益エリアだけで語れない時代に入りました。郊外民泊は「不便さ」を弱点ではなく価値へ転換し、古民家再生や体験型観光を通じて独自の収益モデルを築きつつあります。過疎化対策や地域振興にも直結する新しいビジネスとして、いまその可能性が急速に広がっています。
京都市街地の中心部、特に中京区の四条・烏丸・河原町・御所周辺、下京区の京都駅・四条烏丸、東山区の祇園・清水といったエリアは、主要な交通拠点や観光資源が密集しています。そのため、国内外からの旅行者にとって利便性が極めて高く、高い稼働率と安定した収益が見込めます。一方、京都市の農山村地域に位置する農家民宿は、北区・左京区・右京区京北などに点在しており、その立地の特性上、市街地に比べて交通インフラや通信環境の面で不便さが伴うことが課題となります。しかし、新型コロナウイルス感染拡大下においては、この関係に変化が見られました。都市部の宿泊施設が三密を避けにくい状況にあったのに対し、郊外や農山漁村地域の古民家などを活用した一棟貸しの施設は、他者との接触機会を大幅に減らせるため、比較的安全な宿泊先として注目を集めたのです。Go To トラベル事業のような支援策が適用された際、比較的高額な宿泊料金となる一棟貸し施設に人気が集まった可能性も指摘されています。これは、郊外民泊が危機的な状況下で安全性を付加価値として収益に結びつけた例と言えます。
収益構造は、エリアの主なターゲット層と需要の変動期によって大きく異なります。市街地中心部の宿泊施設は、インバウンドや個人観光客の年間を通じた安定的な需要に支えられていました。一方、郊外や農村地域の農泊施設で以前から中心的だった教育体験旅行型農泊は、春先の4月から5月に需要が集中する傾向があり、感染症拡大のような外的ショックに対してビジネスモデルとしての脆弱性が露呈しました。2020年の緊急事態宣言時には、教育体験旅行の集中期と重なったため、メインターゲットの変更が困難な地域では農泊がほぼ中止状態となりました。また、新型コロナ感染拡大のショックは、農泊の宿泊者数減少率が一般的な宿泊者数よりもやや大きく下押しする傾向が見られました。これは、農家民宿の多くが経営主の母屋に宿泊し交流をメインとするため三密を避けにくかった点や、宿泊客が感染者数の少ない農山漁村地域への感染拡大を懸念して訪問を自粛した意識が強く働いた可能性が考えられます。この課題に対し、郊外の農泊地域では、個人旅行客の取り込みやマイクロツーリズムへのシフトが見られ、長崎県西海市の事例のように、ワーケーションなどの新たな需要創出に取り組む動きも出ています。
市街地の中京区や東山区などでは、歴史的建造物や商業施設が相互に連携し、高い収益効率を生み出しています。これに対し、郊外の農泊施設は、収益効率を最大化するために立地の不便さを補って余りある固有の地域資源を活用することが不可欠です。京都府の農家民宿エリアである中[耕山1] 丹地域の綾部市・福知山市・舞鶴市では、築100年の古民家などの伝統的な日本家屋の美しさと、オーナー家族との温かい交流が観光資源となっています。また、農業体験、そば打ち体験、薪割り体験、星空鑑賞など、その地域でしか得られない多様な体験コンテンツが提供されています。これらの体験は、都市住民が関心を持つ傾向にある農業体験や調理体験、工芸品作りといった活動をセットで提供することで、滞在時間の延長や満足度向上に繋がり、結果的に収益効率を高めます。実際に、農山漁村滞在型旅行を行った旅行者の大規模アンケート調査でも、農業体験、地元住民との交流、農家民泊・農家民宿を同一人物が体験する傾向が強く、これらを組み合わせたサービスの提供が効果的であると示唆されています。また、京都府京丹波町の事例では、京都市内や天橋立、舞鶴、丹波篠山などへ約30分でアクセス可能な立地を活かし、広域観光の拠点として利用される戦略も取られています。単に観光資源そのものとの距離が近いだけでなく、複数の観光地を結びつける戦略的な距離感が収益に貢献しているのです。
過疎化が進む郊外・農山漁村地域において、民泊は地域資源を掘り起こし、持続可能な発展を目指すための有効な手段となり得ます。郊外では、築100年を超える古民家が空き家問題として存在しますが、これらをリノベーションし民泊施設として活用することで、景観維持や資産価値の低下防止につながります。京都府綾部市の「Seventh Home」や福知山市の[耕山2] 「ふるま家」のように、古民家の雰囲気を残しつつ水回りなどを改修し、快適な滞在空間を提供している成功事例があります。また、郊外民泊は、都市からの観光客や移住希望者に対し、農山漁村の生活や自然を体験する機会を提供し、一時的な訪問者だけでなく、地域と継続的に関わる関係人口の増加につながります。旅行後も地域産品の取り寄せやふるさと納税を行う割合が高い層がいることが確認されており、交流が継続する基盤となり得ます。京都市は、農林漁業体験を通じた地域活性化と副収入確保を目的として、平成27年3月[耕山3] から政令指定都市で初めて農家民宿開業に対する規制緩和の運用を開始しました。これにより、北区の雲ケ畑や左京区の久多といった山間部で、林業体験や蕎麦打ち、藁細工などの体験を提供する農家民宿の開業が推進されています。郊外民泊が持続的なビジネスとして成立するためには、地域ぐるみの運営が鍵となります。長崎県西海市雪浦地区[耕山4] の例では、古民家農泊施設が宿泊業だけでなく、地域住民も利用できるコミュニティ拠点としての役割も担うことで、地域外客に過度に依存しない多面的な効果を発揮しています。このように、京都の郊外民泊の可能性は、単なる宿泊提供から、地域経済、文化、福祉、そして空き家対策といった複合的な地域運営ツールへと進化しつつあり、市街地とは異なる次元での価値創出を目指しているのです。
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