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前期に引き続きゲストレビューアワード受賞しました!

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booking.com 口コミ

2017年度に引き続き、2018年もBooking.comさんから「Guest Review Awards」を受賞しました。施設をご利用いただいたお客様、運営のサポートをしてくださったBooking.comのスタッフの皆様に感謝でございます。

施設の運営のご相談を受けるときに、口コミなんて意味あるの?と質問されることがよくあります。その答えは私達の日常の生活の中でも垣間見れるかと思います。何かを購入する時、レストランを予約する時、病院が必要になった時、ネットで情報を収集していませんか。調査会社のデータでは、口コミは、約80%の顧客へ影響を与えるという結果が出ています。

山奥にあるラーメン店、名前も聞いたことがないお寺、看板もないカフェなど、私も施設の正確な情報ではなく、口コモを頼りにさまざまな場所を訪れた経験があります。

稼働率を高めるポイントは、やはり口コミ、そして写真ですね。でも、この2つのポイントを充実させる為に必要なことはたくさんあります。今の運営会社と契約が満了になる、他の運営者の声も聞いてみたいなど、宿泊施設の運営でお困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。

では、2019年もよいレビューを重ねて参りたいと思います!

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    フライトスケジュール

    日本のインバウンド市場は、2025年に年間訪日客数4000万人突破が目前に迫る勢いでした[引用1]。しかし、11月の高市首相による国会答弁を発端とした日中間の政治的緊張により、成長に急ブレーキがかかりました。中国政府の渡航自粛要請を受け、ホテル予約は約57%激減し、関西を中心に深刻な影響が広がっています。この事態は、日本の観光産業が抱える市場構造の脆弱性を浮き彫りにしました。

    急ブレーキがかかったインバウンド成長

    日本のインバウンド市場は、新型コロナウイルス禍から目覚ましい回復を遂げ、2025年には年間訪日客数4000万人突破が目前に迫っていました。特に中国人観光客は、2025年1月から10月までの累計で820万人に達し、前年同期比で40.7%増という勢いで韓国を抜いてトップに立っていました。

    しかし、この成長モードは突如として急ブレーキを迫られることになります。発端は2025年11月7日の高市早苗首相による国会答弁でした。台湾有事時の集団的自衛権行使の可能性に言及したこの答弁に中国政府が猛反発し、11月14日には日本への渡航自粛を呼びかける公告が発出されました。中国政府はその後、日本で中国人が巻き込まれる犯罪が増加したことを理由の一つとして注意喚起を継続しています。

    この渡航自粛要請の影響は瞬時に全国に広がりました。民間の宿泊管理システム「tripla(トリプラ)」によると、要請後1週間(11月21〜27日)の中国からのホテル予約件数は、要請前の週(11月6〜12日)と比較して全国で約57%も激減しています[引用2]。

    過去には2012年の尖閣問題の際にも同様の渡航自粛要請があり、その影響は1年ほど続き、中国人旅行者数が約25%減少しました。野村総合研究所のエコノミストは、同様のことが起きた場合、日本の経済損失は1兆7900億円に上ると試算しています。

    関西地方を直撃したキャンセル連鎖

    中国人・香港からの訪日客は、2025年1月から10月までの累計で1022万人と、韓国や台湾を大きく上回っており、特に来訪者が多かった関西地方では、この急減速への対応に苦慮しています。

    大阪観光局が11月に行った聞き取り調査では[引用3]、府内約20のホテルにおいて、12月末までの中国人宿泊予約の5割から7割でキャンセルが発生していることが明らかになりました。10月に大阪府を訪れた外国人のうち中国人が占める割合が24%に及ぶことを鑑みれば、看過できない数字です。

    京都市内のホテルでも一部でキャンセルが発生しており[引用4]、京都市観光協会は、仮に中国人の宿泊数が半減した場合、11月の予測客室稼働率は4.7ポイント減少し、84.4%まで低下すると見込んでいます。

    交通インフラも深刻な影響を受けています。関西国際、大阪国際、神戸の3空港を運営する関西エアポートによると、関空と中国を結ぶ冬シーズンの就航便数は、当初予定の525便から12月の第2週には348便へと大幅に減少しました。来年以降も平均で約28%の減便となる見通しで、12月単月では関空の中国便の最大34%が運休予定とされています。

    また、団体客に大きく依存していた観光バスツアー事業者も壊滅的な打撃を受けています。大阪府のインバウンド向け観光バスツアー会社では、11月の予約は半分以上がキャンセルされ、12月は予約がほぼゼロとなり、「新型コロナウイルス禍並みの落ち込み」だと危機感を露わにしています。

    オーバーツーリズムの終焉と宿泊料金の変化

    今回の急減速は、観光客の急増で宿泊費が高騰し、オーバーツーリズムが懸案となっていた京都の宿泊市場に劇的な変化をもたらしました。京都市内のホテルでは宿泊料金が大幅に下落し、土日・祝日であっても1泊1万円未満のホテルが並ぶという、一昔前のビジネスホテルの料金水準に戻りつつあります。

    宿泊単価(ADR)の動向も、関西で特に顕著です[引用5]。全国平均では1.1%の上昇が見られるものの、京都府では9.4%の大幅な下落、大阪府でも0.1%の下落を記録しています。大阪市内のホテルでは、12月の客数と単価が下がり、売り上げが前年同月比で2割減る見込みです。

    一方で、全ての観光地が均等に打撃を受けているわけではありません。秋の観光シーズンを迎えていた京都の錦市場商店街では、中国人客の人出が2〜3割減っているという声があるものの、欧米客の割合が高い店では売り上げへの影響は小さいとの意見も聞かれます。

    全国への波及と市場構造の脆弱性

    北海道

    当初関西や沖縄で顕著だった影響は、冬の訪問先として中国人観光客に人気が高い東北地方や北海道にも波及し始めています。

    沖縄では、中国国際航空による那覇―北京線の欠航が100便規模に膨らみ、クルーズ船の寄港や下船のキャンセルも18件に上っています[引用6]。東北地方では、中国国際航空が仙台―上海線の定期便を運休し(26年3月下旬まで再運航未定)、香港拠点のLCCも香港―仙台線を運休する方針を示しました。

    北海道でも緊張感が高まっています。冬に流氷観光でにぎわう知床エリアの大型ホテルでは、中国個人客の1〜2月の予約キャンセルが目立ち、渡航自粛後に4月までのインバウンドキャンセル数が約360件に達しました。

    この危機は、日本のインバウンド市場における中国依存度の高さを改めて浮き彫りにしました。2024年の訪日客全体で、韓国と中国だけで42.8%を占める状況であり、政治的なトラブルによるダメージを軽減するためには、依存構造の是正が不可欠です。

    実際、中国からの旅行需要は、韓国、タイ、シンガポールなどへの行き先変更を引き起こしており、特に韓国は2026年6月までの期間限定で中国人団体客のビザを免除するなど、誘致を強化しています。

    インバウンド回復の陰で進む日本人の旅行離れ

    インバウンド市場が政治的リスクに直面する裏側で、日本の旅行市場にはもう一つの深刻な構造変化が進んでいます。それは、日本人による国内旅行、さらには海外旅行の「旅行離れ」です。

    円安の影響もあり、日本人の海外旅行者数は2024年で1300万人強にとどまり、これは30年前の1994年の水準に逆戻りしています。国内旅行においても減少傾向が顕著です。観光庁の統計によると、2025年の日本人のべ宿泊者数は1月から前年同月比を下回り続けており、特に2月は-7.5%、4月は-5.2%と落ち込みが激しい月も見られます[引用7]。

    この要因の一つは、インバウンド増加によるオーバーツーリズムとそれに伴うホテル価格の高騰です。都市部のビジネスホテルでさえ1泊1万円以下で宿泊することが難しくなり、日本人利用客がいなくても高い稼働率を維持できるため、ホテル側が強気の価格設定をしているのが実態です。

    しかし、旅行離れの根本的な原因は、「失われた30年」と呼ばれる経済低迷の中で賃金が伸び悩んできた結果、「お金も時間もない」という状況に尽きます。物価高や社会保険料負担が増し、可処分所得が停滞する中で、旅行への出費をためらうライト層が多くなっている現状は、日本経済そのものを反映しています。

    リスク分散と持続可能な観光への転換点

    日中対立に端を発した中国人観光客の急減は、日本の観光産業が抱える市場の脆弱性を明確に示しました。現在のところ、予約全体でならすと、国内や中国以外のインバウンド需要増が中国からの予約減少分を一部補っている面も見られます。

    しかし、この事態は、単に中国人客の回復を待つだけでなく、市場の多様化を加速させる好機でもあります。観光収益の基盤を安定させるためには、旅行支出が多くなる傾向にある欧米諸国など、多岐にわたる国・地域からの訪日客を増やす施策を強化することが急務です。

    同時に、インバウンドの回復が著しい一方で、日本人自身が価格高騰や混雑によって国内旅行すら楽しめなくなっているという「旅行離れ」の現状にも向き合わなければなりません。観光産業が持続的に発展するためには、外需に偏重するだけでなく、国内旅行者が再び余裕を持って旅を楽しめる環境を整備し、インバウンドと国内需要のバランスを取ることが、今後の重要な課題となるでしょう。

    今回の急ブレーキは、観光産業が一極集中のリスクを抱えていることを示しており、市場の分散化を促す重要な転換点となる可能性があります。


     [引用1]https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC012WU0R01C25A2000000/?n_cid=SNSTW001&n_tw=1765561411

     [引用2]https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC290C10Z21C25A1000000/

     [引用3]https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC290C10Z21C25A1000000/

     [引用4]https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC290C10Z21C25A1000000/

     [引用5]https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC290C10Z21C25A1000000/

     [引用6]https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC12A0W0S5A211C2000000/

     [引用7]https://news.yahoo.co.jp/articles/9e531934b9053a84b4ae09c3e5459b74e0b1562d?page=2

  • 空港
    スタッフブログ
    空港

    日中関係の悪化に伴う中国路線の大量減便は、日本の観光経済に一時的な激震をもたらしました。しかし、この政治的な対立が引き起こした航空市場の空き枠は、単なる損失に留まらず、日本の国際航空ネットワークが特定の市場への依存から脱却し、より強靭で多様な構造へと進化するための歴史的な好機をもたらしています。失われた中国便の需要を補うだけでなく、その発着枠を巡って世界中の航空会社が激しい競争を繰り広げており、日本の空港が新たなグローバルハブとしての地位を確立する可能性が開かれています。

    関空への集中打撃と観光地の深刻な影響

    日中関係の悪化に伴う中国路線の大量減便により、日本の観光経済は一時的な激震に見舞われています。中国政府による日本への渡航自粛要請が発出された結果、日中間の航空便は大規模な運休に見舞われました。2025年11月27日朝の時点で、12月に中国から日本へ運航予定だった5548便のうち16%にあたる904便が運休を決定しました[引用1]。この減便は座席数にして約15万6000人分に相当し、わずか数日間で3倍超に拡大しています。

    この影響は、特に関西国際空港に集中しました。日本の空港への到着便で見ると、関空着の減便数は626便と最も多く、12月の第2週には就航便数が予定の525便から348便に減少する見通しとなっています。

    来年以降も平均で約28%の減便が続く可能性が示されています。関空の国際線のうち中国便が占める割合は、当初の冬ダイヤで34%と、成田空港の17%と比較して高い依存度を示していました。関空は地方路線が多く、団体旅行客の取り込みに成功してきましたが、団体需要の縮小が直撃する形となり、長竜航空の全便運休や、長沙、福州など6地点への就航便がなくなるなど、具体的な影響が出ています。

    航空輸送に詳しい専門家は、LCC(格安航空会社)は搭乗率が悪いと赤字になりやすく、「見切りをつけるのも早い」と解説しており、深圳航空や春秋航空といった地方系やLCCの減便・運休が目立っています。

    観光地の宿泊予約データにも影響が直ちに反映されました。宿泊管理システムを提供するtriplaによると、要請が出た後の1週間(11月21〜27日)の中国からのホテル予約件数は、要請前の週(11月6〜12日)と比較して全国で約57%の減少となりました[引用2]。特に来訪者が多かった関西地方の危機感は強く、大阪観光局の聞き取り調査では、12月末までの中国人の宿泊予約の5〜7割でキャンセルが発生していることが判明しました。京都市観光協会も市内ホテルの一部でキャンセルを指摘しており、中国人宿泊数が半減した場合、11月の予測客室稼働率は前年同月比3ポイント減になると見込んでいます。事態が長期化し、来年2月の春節の大型連休にまで影響が及べば、地域経済を大きく下押しする要因になりかねません。

    空き枠を巡る世界の航空会社の競争

    しかし、中国便の減便によって生じた発着枠の空きは、日本の航空市場の構造を変革する貴重な資源となっています。日本の大型市場へのアクセスを常に求めている世界の航空会社にとって、この空き枠は新規参入や増便の絶好の機会と捉えられています。

    特に強い需要を示しているのは、米国、欧州、アジアの主要なフルサービス航空会社です。米国系ではデルタ航空、ユナイテッド航空、アメリカン航空、欧州系ではルフトハンザ、AF/KLM、ブリティッシュ・エアウェイズ、そしてアジア系では韓国系、東南アジア系の航空会社が挙げられます。これらの航空会社は、日本の大型市場へのアクセスを求めており、空き枠が出ればすぐに応募し、運航実績を高めようとしています。

    羽田空港において中国系航空会社の減便が7便に留まり、比較的影響が小さいのは、羽田路線は安定的な需要があり、発着枠を巡る競争が激しいため、航空会社が運航実績の低下による発着枠返上を避けるため、減便に消極的になっているからだと分析されています。この事実は、日本の主要空港の発着枠が持つ高い価値を裏付けています。

    発着枠の空きは、LCC(格安航空会社)にとって特に大きな価値を持ちます。ピーチ、ジェットスター、ZIPAIR、韓国LCC各社、東南アジアLCCなど、多岐にわたるLCCが枠獲得に動いています。LCCは、利益構造的に「回数を飛ばす」ことで成立しており、発着枠が空くと迅速に枠獲得に動く傾向があります。LCCの増便は、若年層や個人手配旅行客の訪日需要を喚起し、団体客の減少を補う上で重要な役割を果たします。特に国際線外国人旅客数でしばしば成田を超える成長を遂げてきた関空は、2012年に国内初の専用ターミナルを整備するなどLCCの積極誘致策を打ち出してきた歴史があり、今回の空き枠もLCCのネットワーク強化に活用される可能性があります。

    さらに、発着枠の空きは、これまで参入が難しかった新興市場からの新規直行便開設のチャンスをもたらします。観光地への直行便のニーズは強く、日本路線を拡大中のインドからは、ビジネス客や富裕層の観光需要の取り込みが期待できます。また、ベトナムやインドネシアからの新規参入も期待されています。関空を運営する関西エアポートは、長距離便の拡充を将来的な目標としており、欧米やインドネシア、インドなどへの長距離便の拡充を目標としています。今回の中国減便は、東アジアの観光需要に依存した積年の課題を見直す契機となり、ネットワーク再強化のチャンスを関西エアポートに与えています。

    ハブ機能強化と国内経済への波及効果

    空港 国際貨物

    中国便の減便による代替需要の獲得は、単に失われた座席数を補填するだけでなく、日本の航空ネットワーク全体を高度化させる効果をもたらします。

    日本の主要空港を経由地として利用する「乗り継ぎ需要」は、日本の航空市場の市場規模を拡大する上で非常に重要です。ANAやJALといった日本のフルサービスキャリアは、北米から東京を経由してアジアへ、欧州から東京を経由してアジアへという日本経由の乗り継ぎ需要を増やし、空港をアジアへのハブ(拠点)として機能させることを目指しています。国際的な旅客の流れにおける日本の重要性が増すことで、不安定な一国依存から脱却し、より強靭な国際ネットワークの基盤を構築できます。

    羽田などの主要空港で国際線の発着枠が増加し、欧米やアジアの大手航空会社が運航を拡大すると、その連鎖として国内線の接続利便性も向上する可能性があります。国際線利用客の利便性向上に伴い、国内地方路線との乗り継ぎがスムーズになれば、地方都市への観光需要が増加し、地方経済にも恩恵が波及します。これは、地方の観光産業を活性化させる重要な要因となります。

    また、旅客便の発着枠の柔軟な活用は、旅客需要だけでなく、国際物流の基盤となる貨物便の需要増にも対応する機会を提供します。安定的な物流インフラの確保は、サプライチェーンの安定化にも繋がり、日本の経済活動全体を支える重要な要素です。

    不安定な依存からの脱却を目指して

    日中対立に端を発した中国便の大量減便は、日本の観光・航空業界に大きな痛手を与えました。特に、関空のように中国依存度の高かった空港では、減便が長期化すれば深刻な打撃となりかねません。

    しかし、この危機は、日本の航空ネットワークが長年の課題であった「東アジアの観光需要への依存」を見直し、欧米やインド、東南アジアといった長距離かつ多様な需要を取り込む構造へと変化する決定的な機会を提供しています。空いた発着枠を、市場アクセスを強く求める国際的な航空会社や、機動性の高いLCCに活用させることで、日本の空港は不安定な政治的リスクに左右されにくい、多様性と弾力性のある国際ネットワークを構築できる可能性があります。一時的な痛みは伴うものの、結果的に、日本の国際的な地位と経済の安定性を高めることになるでしょう。


    [引用1]https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE255CA0V21C25A1000000/

    [引用2]https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC290C10Z21C25A1000000/

  • ビザ申請
    スタッフブログ
    ビザ申請

    日本政府が2026年度にも訪日ビザ手数料を欧米並みに引き上げる方針を発表しました[引用1]。これは1978年以降、約50年間据え置かれてきた料金体系の大幅な見直しとなります。

    現在、日本の一次ビザは約3,000円、数次ビザでも約6,000円と、主要7カ国(G7)の中で突出して安い水準にあります。一方、米国は185ドル(約28,000円)、英国は177ドル(約26,000円)、欧州域内で移動の自由を保障するシェンゲン協定加盟国(フランス、ドイツ、イタリアなど)は一律90ユーロ(約15,000円)と、日本の5倍から9倍の手数料を設定しています。

    今回の値上げには複数の目的があります。まず、増加する訪日外国人に対応するための人員確保や事務処理費用の増大に対応すること。そして、深刻化するオーバーツーリズムの抑制です。オーバーツーリズムとは、観光客が地域の受け入れ能力を超えて訪れることで、住民の生活や観光体験の質に悪影響を及ぼす現象を指します。

    政府は手数料の徴収時期も、現在のビザ発給時から申請時へと変更することを検討しています。これにより安易な申請を防ぎ、事務負担の軽減を図る狙いがあります。

    ビザ値上げは本当にオーバーツーリズムを抑制できるのか

    2024年のビザ発給件数を見ると、中国人向けが全体の約7割(524万件)を占め、ベトナム、フィリピンと合わせた上位3カ国で9割弱に達しています[引用2]。これら120カ国以上の短期滞在ビザ必要国からの訪問者にとって、手数料の大幅引き上げは確実に経済的ハードルを高めることになります。

    しかし、ビザ値上げだけでオーバーツーリズムが解決するわけではありません。政府はより包括的なアプローチを検討しています。国際観光旅客税(出国税)を現在の1,000円から3,000円程度へ引き上げる案や、訪日外国人による消費税免税措置の原則廃止も議論されています。これらの背景には、家電や医薬品の大量購入による転売問題など、「日本が目指す観光立国の姿とは異なる」状況への懸念があります。

    これらの施策を組み合わせることで、価格に敏感な層や安易な観光目的の訪問者を抑制し、より質の高い観光への転換を図ろうとしています。ただし、負担増が過度になれば、日本への訪問意欲そのものを削ぐリスクもあります。政府内には「外国人が来なくなってみんな慌てるのではないか」という慎重論も存在しており、バランスの取れた施策運営が求められています。

    京都が直面する観光課題と独自の対応策

    オーバーツーリズムの影響を最も強く受けているのが京都市です。市営バスが観光客で混雑し、住民が乗車できない事態が日常化していました。この状況に対し、京都市は独自の対策を次々と打ち出しています。

    2024年には、京都駅から主要観光地に直行する「観光特急バス」の運行を開始しました。運賃は市バスの約2倍の500円に設定し、観光客を特急バスへ誘導することで、市民が利用する路線バスの混雑緩和を図っています。

    さらに松井孝治京都市長は、市バス・地下鉄で市民と観光客の運賃に差をつける「市民優先価格」の導入を公約に掲げ、国土交通省との協議を進めています[引用3]。これは住民の移動手段を確保しながら、観光収入も維持するという難しい課題への挑戦です。

    最も大胆な施策は、宿泊税の大幅引き上げです。2026年3月以降、上限額を現在の1人1泊1,000円から10,000円へと10倍に引き上げる方針を決定しました。観光による負荷を軽減しながら収益を確保する戦略です。

    観光依存経済のジレンマ 京都と日本の未来

    地方誘致

    訪日外国人の消費額は、三大都市圏(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫)に全体の8割近くが集中しています。京都府は2023年4月から12月の消費額が1,000億円を超えるトップ6都道府県の一つで、インバウンド消費は地域経済の重要な柱となっています。

    ビザ手数料の値上げが訪問客の大幅減少につながらないという政府の見込みもありますが、各種負担増の積み重ねが「冷や水」となる可能性は否定できません。高島屋などの百貨店からは「訪日客数の減少は百貨店利用者数にも影響する」との懸念の声が上がっています。特に中国人観光客に依存度の高い小売業への影響は無視できません。

    一方で、政府は訪問先で100万円以上を消費する富裕層の地方誘致を推進し、観光地・観光産業の高付加価値化を目指しています。これは2030年に訪日外国人6,000万人という目標を掲げながらも、単純な量的拡大ではなく、質的向上を重視する方向への転換を示しています。

    ビザ手数料値上げによる歳入の一部は、オーバーツーリズム対策や審査厳格化の費用に充てられる予定です。さらに大幅な収入増が見込まれる場合には、高校授業料の無償化拡大の財源とする案も政府内で議論されており、観光収入を国民生活の向上に還元する仕組みづくりも進められています。

    まとめ 持続可能な観光立国への転換点

    訪日ビザ手数料の値上げは、単なる料金改定ではなく、日本の観光政策の大きな転換点となる可能性があります。約50年間維持されてきた低価格政策から脱却し、国際水準に合わせることで、適正な対価を徴収しながらオーバーツーリズムの抑制を図る狙いがあります。

    京都では、すでに独自の対策が進められており、国の施策はこうした地方の取り組みを後押しする形となります。しかし、観光立国としての成長目標と、住民生活の質の確保、そして地域経済の持続可能性という三つの要素のバランスをどう取るかは、今後の大きな課題です。

    重要なのは、徴収した手数料や税収を観光インフラの整備やオーバーツーリズム対策に確実に還元し、観光客と住民の双方にとってより良い環境を作ることです。今回の値上げが、日本観光の質的向上と持続可能性の確保につながるかどうか、その成否は今後の施策運営にかかっています。


     [引用1]https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA0667H0W5A800C2000000/?n_cid=SNSTW005

     [引用2]https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA0667H0W5A800C2000000/?n_cid=SNSTW005

     [引用3]https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC291R40Z20C24A6000000/