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簡易宿泊所営業に必要なバリアフリー協議とは?協議申請や整備基準について解説!

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京都市では条例が改正されたことで宿泊施設に関するバリアフリー基準が強化されました。簡易宿泊所を営業するには、バリアフリー協議が必要になります。本記事では京都市のバリアフリーに関する条例や簡易宿泊所営業のための注意点について詳しく解説します。

「京都市建築物等のバリアフリーの促進に関する条例」が改正


京都市では「京都市建築物等のバリアフリーの促進に関する条例」が施行されています。建築物のバリアフリーを促進することを目的に2004年に施行されました。2021年になると、「京都市建築物等のバリアフリーの促進に関する条例」は改正され、宿泊施設のバリアフリーに関する基準が強化されました。京都市で新設されるすべての宿泊施設を対象とし、原則としてバリアフリー化を義務づけています。

バリアフリーを促進することで、宿泊施設の質の向上を図ることが目的です。また、オーバーツーリズムを懸念し、容易に宿泊施設を増やせないようにすることも理由とされています。

京都市の宿泊施設を対象としたバリアフリー基準

「京都市建築物等のバリアフリーの促進に関する条例」では、2021年10月1日以降に建築などを行うすべての宿泊施設について主に以下の基準を守ることが求められます。

  • すべての客室内部のバリアフリー化
  • 共用部へのエレベーター設置
  • 共用便所の基準の充実
  • バリアフリー情報の公表・届出

京都市の宿泊施設に要求されるバリアフリー基準について、それぞれ詳しく紹介します。

すべての客室内部のバリアフリー化

基本的に宿泊施設にあるすべての客室の内部をバリアフリー化する必要があります。車いす使用者に配慮したスペースを確保し、段差のない環境にしなければいけません。ベッド周辺の空間や客室内の通路、便所・浴室の出入り口など細かな点について確保すべきスペースが定められています。

上記の基準は、客室内部をバリアフリー化することで、高齢者や障害者にとって客室の選択肢が広がることが狙いです。

共用部へのエレベーター設置

宿泊施設の規模に応じて共用部にエレベーターを設置しなければいけません。従来は建物の規模が1,000㎡を超える場合にのみ、エレベーターの設置が必要でした。法律が改正されたことで、1,000㎡未満の建物であっても、状況によっては共用エレベーターの設置が必要です。

原則として宿泊施設にはエレベーターの設置が求められます。ただし、小規模施設で地上階のみに客室を設けるケースなど、エレベーターの設置が不要なケースもあります。また、一棟貸しやメゾネットタイプであり、客室内に段差がある場合は、客室内のエレベーターの設置が義務づけられています。共用エレベーターの設置を促すことで、高齢者や障害者などを含むすべての人がスムーズに移動できるようになります。

共用便所の基準の充実

建築などを行う用途面積が1,000㎡未満の宿泊室では、共用便所を設ける際に以下の基準を守らなければいけません。

  • 腰掛便座の設置
  • 手すりの設置
  • 便所の出入り口は幅80cm以上で引き戸または外開き戸にする
  • 車いす使用者が便座に移乗するおに必要な空間を確保する
  • 共用便所までの経路は幅を最低でも90cm以上にし段差なしとする

また、用途面積が1,000㎡を超える宿泊施設では、車いす使用者専用のトイレ設備の設置が必要です。

バリアフリー情報の公表・届出

宿泊施設を設置する際には、バリアフリー情報の公表や届出が義務づけられます。バリアフリー情報はインターネットなどを用いて公表しなければいけません。また、バリアフリー情報として公表した内容は、京都市への届出が求められます。届出をすると、京都市の方でも宿泊施設のバリアフリー情報を公開します。

高齢者や障害者などが安心して施設を利用できるために、バリアフリー情報の公表が義務づけられました。宿泊施設のバリアフリー情報が公表されれば、利用者が事前に自身にとって使いやすい施設かどうかを判断できます。バリアフリー情報の公表については、新たに建築などを行う宿泊施設については義務です。また、既存の宿泊施設に対してもバリアフリー情報の公表について努力義務が定められています。

簡易宿泊所営業に必要なバリアフリー協議

簡易宿泊所を含め京都市で宿泊施設の営業を始める際には、バリアフリーの協議申請が必要になります。

バリアフリーの協議申請とは、図面の審査のことです。協議申請を行い問題がなければ協議書が交付されます。さらに、バリアフリーの工事が完了した後で完了検査申請をしなければいけません。現地検査が行われ、バリアフリー基準を満たしていることが確認されれば、検査済証が交付されます。最後にバリアフリー情報の公表を行うことで、施設の使用を開始できます。

バリアフリーの協議申請は標準処理期間が約1ヶ月です。ただし、状況によっては、さらに長い期間がかかることがあります。

バリアフリー条例の例外について

京都市の宿泊施設に対するバリアフリー条例には例外が設けられています。京町家を用途変更して宿泊施設として利用する場合は、代替措置を講じることでバリアフリーの整備基準の緩和が可能です。京都市では、条例によって京町家の保全及び継承が推進されており、建築物の保全と活用が重視されています。そのため、構造上バリアフリーの工事が難しい場合は、事前に京都市と協議をした上で、京町家についてはバリアフリー条例が緩和されます。

京町家として認められる要件の主なものを以下にまとめました。

  • 1950年11月23日(建築基準法の施行日)以前に建築されている
  • 木造の建築物である
  • 伝統的な構造を有する
  • 3階建て以下
  • 一戸建て又は長屋建て
  • 平入りの屋根

また、要件を満たしていても、著しい改変や違法な増改築をしている場合は、緩和が認められないケースがあります。京町家を再生・改修して当時の状態を復元したものについては、緩和が認められる可能性があります。

バリアフリーの要件を満たすのは一般の家では難しい

これから一般的な住宅を用いて京都市内で宿泊施設を営業したい場合は、バリアフリーの要件を満たす点が大きな課題になります。さまざまな要件が定められており、一般的な住宅では基準を満たすことは困難です。

京町家以外の住宅を京都市で宿泊施設として利用するのは、現実的に難しいといえます。

民泊という選択肢がある


簡易宿泊所は旅行業法によって定められた宿泊施設の一種です。一方、民泊とは民泊新法によって定められており、住居の一部を宿泊サービスとして利用するものを指します。

民泊の場合は法的には宿泊施設に該当しないため、バリアフリー条例の適用を受けません。京都市で民泊を始める場合は、バリアフリー協議をすることなく宿泊サービスの提供ができます。民泊であれば用途変更も不要であり、比較的簡単な手続きで営業を開始できるのが特徴です。ただし、民泊は年間180日までしか稼働できない点が簡易宿泊所と比較した場合にデメリットになります。宿泊サービスの売上が半分になるため、新しく物件を購入して営業を始める場合は、ローンを返済するまでの年数が単純計算で倍になり、負担が大きいです。

また、民泊の営業をするには、住宅宿泊管理業者に管理を任せなければいけません。京都市の場合は、近隣に管理者を駐在させなければいけないなど独自の規制が存在します。京都市で民泊で宿泊サービスを提供したい場合もいくつか解決すべき問題点があるため、しっかりと対策を考える必要があります。

まとめ

京都市では宿泊施設に対してバリアフリー環境を整備することを義務づけており、新しく簡易宿泊所を営業するハードルが高まりました。バリアフリーの基準を満たした上でバリアフリー協議を受ける必要があり、一般的な住宅を簡易宿泊所として利用するのは困難です。

これから京都市で宿泊サービスを始めたい場合は、簡易宿泊所よりも民泊の方がハードルは低くなります。ただし、民泊もさまざまな法規制が存在しており、解決すべき問題があるため、しっかりと情報収集を行い対策を進めましょう。