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旅館・ホテル、簡易宿所、民泊、ゲストハウスの違いって?

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旅館・ホテル、民泊、簡易宿所、ゲストハウス、オンラインの宿泊予約サイト上ではそれぞれの差がわからなくなっているといっても過言ではないかもしれません。実際ホテルを予約したつもりであっても、実際は簡易宿所だった。または、旅館を貸し切ったつもりが、京町家の簡易宿泊所だった、なんてケースは多いと思います。もしかしたら、その違いさえ分からず、利用している方もいることでしょう。実際、それが違ったからといって、何の問題もありませんから。

簡易宿所といえば、カプセルホテルや小さな部屋に二段ベッドを詰め込んだような施設を思い浮かべる方も多いかもしれません。出張するサラリーマンやバックパッカーの方などがとりあえず安価に寝床を確保する為に利用する施設、私も以前はそんなイメージを持っていました。しかしながら、冒頭でも少し触れたように、それぞれの差が明確でなくなってきたことも法律が改定された一つの要因かもしれません。

旅館とホテルの今までの違い~新しい法律でどう変わったのか

現在でこそ、「旅館とホテル」は同じものとしてくくられるようになりましたが、この2つはかつては明確に分けられていました。
かつてホテルは“「洋式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいう」とされていました。
引用:厚生労働省「旅館業に関する規制について
https://www.mlit.go.jp/common/001111877.pdf
対して旅館は、“「和式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいう」とされていました。
引用:厚生労働省「旅館業に関する規制について
https://www.mlit.go.jp/common/001111877.pdf

ただ、このような「雰囲気の違い」「内装の違い」以上に重要なものがありました。
それが、「客室数の違い」です。

旧法において、ホテルは客室数は“10 室以上”、対して旅館の場合は“5室以上”とされていたのです。
引用:厚生労働省「旅館業に関する規制について
https://www.mlit.go.jp/common/001111877.pdf

しかしながら2018年6月に施行された新法の旅館業法において、この見直しが行われました。今までは最低10室もしくは5室以上とされていましたが、これが廃止されたのです。これによって、たとえ1室しかなかったとしても、「旅館」「ホテル」と名乗ることができるようになりました。詳しくは後述しますが、かつては10室(ホテル)もしくは5室以下(旅館)の場合は、「旅館・ホテル」とは名乗れず、基本的には客室にカギも掛けられなかったのです。これも大きな変更点といえるでしょう。

ちなみにかつては洋室客室/ホテルは和式客室/旅館よりも広く部屋を広く設ける必要がありましたが(洋室客室は9㎡以上、和式客室は7㎡以上)が撤廃されて、洋室客室でも7㎡以上で構わない、とされるようになりました(ただし、ベッドなどの寝台を置く場合は9㎡以上とされています)。

2018年に行われた旅館業法の改正は、厳しい制限を少し緩和する方向で行われたものが多かったといえます。もちろん新たな規制も入ったのですが、かつては旅館よりも厳しい条件が求められた「ホテル」にとっては、その条件が緩くなったと考えるのが妥当です。このような流れもあり、かつては分けられていた「旅館営業」と「ホテル営業」も、「旅館・ホテル営業」と一つにまとめられるようになりました。

なお、この法律は施行されてかあまり時間が経過していない為、「ホテル・旅館の違い」と検索した場合、旧法に基づく解説をしているサイトも非常に多いので注意が必要です。

簡易宿所とは

旅館業において定義づけられているもののひとつとして、「簡易宿所」と呼ばれるものがあります。これは、山小屋やスキー小屋などに代表される施設をいいます。1つの場所を大勢の人で使うことを前提とした宿泊施設をいいます。また、身近なところでは、「カプセルホテル」などもこれにあたります。

「大勢で使う」ということが基本となっているため、簡易宿所の場合は客室の延べ床面積をほかのものよりも大きくとる必要があるのが特徴です。
簡易宿所の場合は、10人以上の宿泊ならば33㎡以上の客室面積を確保する必要があります。ただし、簡易宿所でも「5人までしか泊めない」ということであれば、3.3㎡×人数分(この場合は3.3㎡×5=16.5㎡)以上ならばよいとされています。
また、ホテルや旅館の場合は、なんらかのかたちで帳場(俗に受付やフロントと呼ばれる場所)を必要としますが、簡易宿所の場合はこれに関して規制はされていません(自治体によって独自の条例を定めている場合はあります)。

なお、一般に「ゲストハウス」と呼ばれているものを民泊と認識している方が非常に多いようですが、実は、「簡易宿所」として認可されていることがほとんどです。

民泊とは

簡易宿所と非常に似た特徴を持つ「民泊」についてみていきましょう。民泊はここ最近でよく話題に上るので、興味を持って見守っていた人も多いと思われます。法律上の民泊のもっとも大きな特徴としては、「営業日数が定められていること」です。

簡易宿所やホテル・旅館では、泊まる日数に制限はありません。しかし民泊の場合は180日までと決められています。加えて、不在時には管理業者への委託が義務とされていますが、設備面で一部、簡易宿所よりもその条件が緩和されることがあります。なお、客室面積に関しては簡易宿所に準じます。

上記でも触れた通り、1年で考えても営業日数が簡易宿所の半分になりますので、本格的なビジネスとして民泊を選ぶ際は、採算が取れるような条件で営業できるかどうか、事前にしっかりと確認をしておかなければならないでしょう。

まとめ

ホテル、旅館、簡易宿所など、営業の種別としての名称は異なるが、利用者はそれぞれの違いを正しく認識しておらず、気にしている方も少ない。法律や条例の改定により、営業種別による構造の差はなくなってきている。報道等で民泊という名称がよく取り上げられている影響もあり、特に一戸建てタイプの簡易宿泊所が民泊として広く認識されているが、実際は簡易宿泊所として認可されていることが多い。